大麻取締法の改正案が公開!気になるその内容は?
今秋の臨時国会にて、大麻取締法の改正案が提出されました。
今回公開された改正法案の要綱には、全部で5つの変更・追加点が記されています。
- 改正の趣旨
- 大麻取締法の一部改正
- 大麻草の栽培の規制に関する法律の一部改正
- 麻薬及び向精神薬取締法の一部改正
- 施工期日等
具体的にどのような内容になっているのでしょうか?
この記事では、その改正案の内容を詳しく見ていきます。
1. 改正の趣旨 -なぜ改正するのか?-
第一条「改正の趣旨」では、大麻取締法の改正の背景・理由が述べられています。
医療及び産業の分野における大麻の適正な利用を図るとともに、その濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため、大麻草から製造された医薬品の施用を可能とするとともに、有害な大麻草由来成分の規制、大麻の施用等の禁止、大麻草の栽培に関する規制に関する規定の整備等の措置を講ずること。
これまでは前法により、大麻由来成分の医療利用には厳しい規制がかけられていたため、大麻由来の医薬品を国内で施用することは不可能でした。
しかし、国際的に大麻の医療的価値が見直され、先進国を中心に医療大麻の解禁が進んでいます。この状況を鑑み、大麻由来医薬品を日本国内でも使えるようにしていく動きが出てきました。
そこで、医療用大麻(大麻由来の医薬品)を使う際のルールに加えて、乱用を防ぐためのルールも作りましょう、ということで今回の改正に至りました。
2. 大麻取締法の一部改正
「大麻取締法」から「大麻草の栽培の規制に関する法律」へ
今回の改正により、1948年に公布・施工された「大麻取締法」の名称が変更され、「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改められる予定です。
前法では大麻全般についての規制法でしたが、新法では大麻草の栽培にフォーカスした内容になっています。
大麻の定義
まず、序盤の総則では「大麻」や「大麻草」の用語の定義を行っています。
「大麻草」:カンナビス・サティバ・リンネをいうものとすること
「大麻」:大麻草(その種子及び成熟した茎を除く。)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く。)をいうものとすること。
前法では、「大麻草 = カンナビス・サティバ・エル(L)」とされていましたが、このLは”リンネ(Linne)”を意味しているため、新法でも定義には変わりがありません。
大麻の定義についても、大麻草の成熟した茎と種子及びそれらの製品は大麻ではないとされています。こちらも前法と同じですね。
栽培者の定義
大麻草の栽培にフォーカスした内容に改正されたことから、大麻草の栽培者について定義が行われています。前法では、大麻栽培者の定義はありましたが、新法では「大麻草採取栽培者」と「大麻草研究栽培者」という2つのカテゴリに分けて定義を行っています。
「大麻草採取栽培者」:都道府県知事の免許を受けて、種子又は繊維を採取する目的で、大麻草を栽培する者をいうものとすること
「大麻草研究栽培者」:厚生労働大臣の免許を受けて、大麻草を研究する目的で、大麻草を栽培する者をいうものとすること
大麻草採取栽培者とは
都道府県知事の免許を受けて、種子又は繊維を採取する目的で、大麻草を栽培する者は「大麻草採取栽培者」と定義されています。
免許の有効期間は発行日から翌々年の12月31日までとされており、以下の事項を管轄の都道府県知事へ毎年報告する義務があります。
- 大麻草の作付面積
- その年に採取した大麻草の繊維の数量
- その年に採取・所持した大麻の数量の収支
大麻研究栽培者とは
厚生労働大臣の免許を受けて、大麻草を研究する目的で、大麻草を栽培する者は「大麻研究栽培者」と定義されています。
前法では都道府県知事の免許制でしたが、厚生労働大臣の免許制になっていることから、画一化されたルールのもとで運用・管理が行われるのではないかと考えられます。
免許の有効期間は発行日からその年の12月31日までとされています。
大麻由来の医薬品の規制を撤廃
前法では、大麻由来の医薬品は厳しく禁止されていました。
そのため、THCを含まずに純粋なCBDだけを使用した医薬品であっても、そのCBDが大麻の成熟した茎や種子以外から抽出されている場合は国内での施用・受用ができませんでした。
しかし、新法では該当の規定・罰則が削除され、大麻由来の医薬品を国内でも使えるように変更。
現在治験が行われている難治性てんかん向けの「エピディオレックス」をはじめとした、大麻由来医薬品の利用が期待されます。
3. 大麻草の栽培の規則に関する法律の一部改正
ここでは、2. 大麻取締法の改正で新しく定義された、「大麻草採取栽培者(第1種大麻草採取栽培者)」と「大麻草研究栽培者(第2種大麻草採取栽培者)」において、大麻草の栽培や大麻草の種子の取り扱いに関する大まかなルールが決められています。
4. 麻薬及び向精神薬取締法の一部改正
今回の改正では、大麻取締法だけでなく麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)の一部改正も同時に行われる予定です。
大麻使用罪:THCは全面的に規制
新法では、使用者をハイにする精神作用を持つ「THC」について全面的に規制される予定です。(※Δ9-THCおよびΔ8-THC)
実は、前法の大麻取締法ではTHCという成分自体の規制はされていませんでした。
というのも、大麻取締法はあくまで大麻(大麻草の成熟した茎と種子以外の部位)とその製品を取り締まっている法律であって、大麻に含まれる特定の成分に関する取り決めはありません。
また、麻向法では、人為的に化学合成されたTHCは規制されていましたが、大麻由来のTHCについては例外でした。
したがって、体内からTHCが検出されたとしても、それが規制部位から抽出されたものかどうかを判別するのはほぼ不可能で、取り締まりの大きな障壁となっていました。
そこで、両法のハレーションを取り除くためにも、大麻草由来か化学合成かに関わらず、THC自体を成分規制しようという動きです。
少しでもTHCが含まれるとNG?
今回の改正によって、全面的に規制されるTHCですが、少しでもTHCが含まれているとアウトなのでしょうか?
過去には、一部のCBD製品などから微量のTHCが検出される事案も発生しています。
その濫用による保健衛生上の危害が発生しない量として政令で定める量以下のΔ9-THCを含有する物であって、Δ9-THC以外の麻薬を含有しないものを、麻薬から除外するものとすること。
この点に関しては、新法にてTHCの含有量の下限値が設定され、その下限値を上回った場合に同法が適用される可能性があります。
化学的にTHCに変化できるような物質はNG?
麻向法の改正では、以下の内容が記されています。
化学的変化(代謝を除く。)により容易に麻薬及び向精神薬取締法別表第一に掲げる物を生成するものとして政令で定めるものについては、麻薬とみなして、麻薬及び向精神薬取締法の規定を適用するものとすること。
この”容易に”がどの程度なのかは不明ですが、化学変化により容易にTHCを生成できる物質についても同様に規制対象となる可能性があります。
5. 施行日など
今秋の臨時国会において、こちらの改正案が可決された場合、一部を除いて公布後1年以内に施行される予定です。
また、11月14日時点の報道では、今回の改正案は衆議院を通過したため、大麻取締法の改正はほぼ確実と考えられます。
まとめ
この記事では、大麻取締法の改正案の概要とその影響について詳細に解説しました。
今後、この法改正が日本における大麻の使用と規制にどのような変化をもたらすのか、注目です。