THCHやTHCB、HHCH、HHCPなどの大麻のTHC代用品におけるリスクと課題

THCHやTHCB、HHCH、HHCPなどの大麻のTHC代用品におけるリスクと課題

最近、大麻のTHC*と類似の精神作用を持つTHCH*やTHCB、HHCH、HHCPなどの脱法製品が問題になっています。これらの物質は大麻と同等またはそれ以上の効果を持っているにもかかわらず、法律で規制されていないため、日本で流通しています(2023年7月時点)。

この記事では、THC代用品として特に注目されているTHCHというカンナビノイド*に焦点を当てて、これらの問題についてC&H研究開発部からの説明および考察と弊社C&Hの考えを記します。

※2023年8月4日よりTHCHは規制対象となりました。THCH規制後、内容を更新しており、THCBなどそのほかの代用品に関心がある方も安心して読み進めてもらえます。

【用語解説】

  • THCは主要な大麻成分のひとつであり、大麻に特徴的な多幸感などの精神作用を引き起こす原因物質です。
  • THCHとは大麻のTHCと類似した化学構造をもつ物質で、法規制されているTHCの代用品として流通している薬物です。ほかにもTHCB、THCV、HHCH、HHCPなどが流通しています。
  • カンナビノイドとは、大麻草(ヘンプ)に含まれる大麻特有の成分のグループを表す分類名です。有名なカンナビノイドにはTHCやCBDがあります。

※本記事は2023年7月時点での内容です。なお、法規制状況が変わっても有益な内容を提供できるような構成にしております。

※画像:ACS LABORATORYより引用

 

こんにちは。C&H株式会社です。

今回は、皆様も含めて私たちが危険な大麻関連製品(=カンナビノイド製品)に引っかかってしまわないよう、また、私たちの周りでTHCHなどに関連する事故が起こって大麻業界、ひいては医療・製薬・化粧品・食品業界などに悪影響が生じてしまうような事態にならないよう、THCHに関する我々C&Hの見解と皆様への注意喚起をお伝えしたいと思います。

なお、THCB、THCV、HHCH、HHCPなども基本的にはTHCHと同じ視点から議論できますので、置き換えて読み進めてもらうことも可能です。

弊社では先日、THCHに関して以下のようなツイートで注意喚起をさせていただきました。

我々はTHCHを全否定するわけではありませんが、THCH(そのほかTHCB、THCV、HHCH、HHCP)製品の利用について、このような注意喚起をする明確な理由が3つあります。

1.法整備のない現状、事故を起こすリスクがあり、今後、規制対象となりうること。
... 大麻のTHCの代用として、HHC、HHCO、THCO、THCPなどが流通した過去があり、事故のリスクがあるとして、これらが規制されてきたため、新しい代用品であるTHCHなどもTHCのような精神作用があるいじょう今後確実に規制の対象になる。

2.信頼できる品質管理体制が確立されていないこと。
... 製品に含まれる成分が本当に該当成分かも証明されておらず、危険な不純物や添加物が含まれていないかどうかも確認されていない事例が多い。

3.有害性が否定できないこと。
... 充分に研究で安全性などが示されていない新しい成分への慎重さが足りないこと。

 また、THCHのような安全性の確実でないものの流通は事故を起こすリスクがあるだけでなく、事故が起こった時に大麻業界やCBD業界へのイメージダウンにもなります。そのため、弊社ではTHCHのようなカンナビノイドは取り扱わない方針です。

では、これから、消費者、経営者、研究者、医療従事者などのさまざまな立場の方がいることを踏まえて、大麻のTHCの脱法製品にまつわる話題をTHCHに焦点を当てながら掘り下げていき、どのように向き合っていくのがベストなのか考えていきましょう。

危険ドラッグとTHCH

大麻のTHCと危険ドラッグに関する背景

危険ドラッグとは、覚せい剤や麻薬、向精神薬、アヘンなどに類似した作用を持つ物質を含む薬物のことで、大麻に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を模倣した合成カンナビノイド系薬物も危険ドラッグに指定されています。

もともとTHCに関連する有害性の高い危険ドラッグとして問題となっていた多くが、大麻という植物に含まれていない、いわゆる自然界に存在しない合成カンナビノイドやTHCよりも人体に強く作用するように設計されたカンナビノイドでした。

しかし、最近では、もともと大麻に含まれているカンナビノイドで、THCに非常に似た化学構造の物質が、より注目されるようになってきました。

THCHとは?

THCHはアサ科の植物、大麻に含まれる成分として知られており、自然界に存在するカンナビノイドです。

日本では規制対象となっているTHCと類似した構造を持つ物質です。THCと構造が類似しているため、THCの精神作用とよく似た効果を示します(そのほかTHCB、THCV、HHCH、HHCPも同様)。

 しかし、THCHは大麻に微量しか含まれていないため、大麻から抽出するのは困難となっており、実際には化学的処理により合成されていると考えられます。

 THCHはTHCP*とともに2019年に科学者により発見されました。THCHを発見した研究者らは、これまで確認されているTHC系の大麻成分のなかではTHCHがTHCPに次いで2番目に精神活性の強いカンナビノイドであると考察しています。

 実際、多くのユーザーは、THCHの効果はTHCPに匹敵し、典型的なTHCよりも効果が持続する傾向があると報告しています(※参照:ACS Lab.)。

 THCHを含む製品の例としてはべイプやグミ、チョコ、クッキーなどがあり、THCHは様々な形態でブレンドされています。気になる方は、ぜひTwitterやネットなどでTHCHと検索して話題になっている商品にどんなものがあるか調べてみてください(そのほかTHCB、THCV、HHCH、HHCPも同様)。

 

THCHのリスク

THCH製品が社会に与えうる影響

THCHの今後と法規制

2023年7月現在、THCHは日本国内では合法ですが、規制されているTHCと似た作用を持つため、将来的には禁止薬物となる可能性が高いとされています。

※予想通りTHCHは8月に規制されました。そのほかTHCB、THCV、HHCH、HHCPなどもすべて同様に議論できます。

過去にも類似の薬物として、HHC、HHCO、THCO、THCPなどのTHC代用品が禁止された経緯があり、例えばHHC(ヘキサヒドロカンナビノール)は令和4年3月17日に指定薬物に指定されています。

 HHCについても、過去に流行となった際、弊社C&H株式会社のHHCへの見解とスタンスに関するプレスリリースを出しております。
【顧客の安心安全と、市場の健全な発展のため:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000073416.html

 このように、濫用の危険性があるような精神作用をもつ薬物の流通が増加すると、法律で規制がかかることがあり、規制がかかると類似の作用を持つ新しい物質が登場し、またそれが規制されると別の新たな薬物が出現するといったようにイタチごっこが発生します。THCHもそのイタチごっこの末に流通した産物と言えます。

THCHの流通が大麻業界に与える影響

世界での大麻合法化の流れの中で、THCHなどのTHCを模倣した薬物の使用者による事故の発生が懸念されています。

例えば、THCHの使用後に自動車を運転し、交通事故を引き起こすなど、二次的な犯罪の発生や薬物中毒による健康被害が考えられます。これにより大麻業界全体に悪影響を与える可能性があります。なぜなら、大麻由来の成分による事件や事故は大麻そのもののイメージを低下させる可能性があるからです。

THCHなどの問題が深刻化すると、国や厚生労働省は対策を強化する可能性があります。その結果、大麻業界全体に対して規制や監視の強化が行われることになり、以下のような懸念が生じてきます。

・日本での研究の遅れ
... 大麻業界でのビジネスチャンスを逃す恐れがあり、日本の研究が世界に遅れを取る可能性があります。

・CBDなどのイメージ低下
... 安全性の高いカンナビノイドの印象が悪化し、大麻業界全体の発展が遅れる可能性があります。

・大麻由来の製品の制限
... もし大麻由来の製品の使用が規制されると、メンタルケアや医療目的での利用を望んで必要としている人に適切な製品が将来的に届けられなくなる可能性もあります。

THCH製品の安全性の問題

製品の分析検査や品質管理における課題

販売者や製造業者が原料の成分を正確に把握していないことや、品質管理が不十分な場合が多く見受けられます。これは、THCHに限らず、CBD製品も含めたすべてのカンナビノイド製品について言えることです。

原料や製品の中身が正確に把握できず、曖昧な場合、どのような不純物や添加物が健康被害の原因になるかわかりません。もちろん、販売前の最終加工品の中身を分析できれば製品の成分を把握できますが、実際にそこまで確認している販売者はほぼいません。

THCH製品でも、THCHの濃度をかさ増しするために、より危険な物質が添加されている可能性もあります。特に、分析検査証明書(CoA:Certificate of Analysis)の改ざんにより、販売者も製品中の原料の成分を正確に把握できないことが問題となっています。

CoAの改ざんについては、例えば下記のような議論がなされています。

THCHという物質そのもののリスク

THCHについては、その安全性や効果に関して十分な研究が行われていません。実際に、具体的な安全性試験や毒性調査に関する論文はほとんど報告されておらず、生体への悪影響が懸念されます。そのほかTHCB、THCV、HHCH、HHCPや今後新しく出てくる代用品もすべて同様のことが言えます。

このように、THCHなどを含む製品のリスクは、まだ解明されていない部分が多く、使用する際は慎重な判断と情報収集が必要です。適切な研究と規制の下で、安全かつ信頼性の高い製品が提供されるようになることが望まれます。

CBDなどの大麻関連製品の利用

THCH問題がCBD事業に与える影響

大麻から抽出されるカンナビノイドはTHCとCBDが有名ですが、大麻が人をハイにするのはTHCという成分に由来しており、CBDにこのような作用はありません。また、CBDは依存性がなく、安全性が高いということがWHOの報告書でも示されています。

弊社C&H株式会社は主にCBD製品を製造・販売しており、ヘンプ(=産業用大麻)の成分であるCBDの活用やヘンプの素材の利活用に注目しています。弊社では「人と地球のストレスを軽減する」という共通理念がありますが、CBDにはそれを実現するポテンシャルや価値があると信じています。

THCHに関連する問題が原因でCBDやヘンプに悪いイメージが形成されてしまうと、多くの研究者や利用者が見出してきたCBDおよびヘンプの価値や可能性を無駄にしてしまうことになりかねません。

CBD製品でも品質管理が不十分な販売者が多い

一方で、THCH製品がもたらすリスクの中でも説明した分析検査や品質管理の問題は、CBD製品も含めたすべてのカンナビノイド製品に当てはまります。

成分がラベル表示通りの濃度で正確に含まれているか

世界中でCBD製品の認知が高まってきていますが、そのCBD製品の安全性やラベルの正確性にはまだまだ疑問点があります。

実際に、2017年末、JAMAでの報告でも、約69%のCBD製品が不正確なラベル表示であったとの結果を示しており、ラベル表示通りCBDを含有している製品かどうかの検証はますます重要になってきています。

 弊社では、日本の市場に流通している10種類のCBD e-liquidを購入し、ラベル表示通りにCBDが含有されているか濃度分析を実施したところ、5/10すなわち半数の製品でラベル表示の濃度と実際の濃度が異なっており、なかでも3つの製品(およそ1/3の製品)で大きくラベル表示から異なる結果が得られました(参照:https://c-h.inc/research_development/posts/cbd-cannabinoids-analysis)。

カンナビノイド原料の品質に問題はないか

また、弊社では、製品に使用しているCBDについても自社の分析機器(HPLC)を用いてTHCやTHCH、HHCなどの不純物が含まれていないことを確認しています。

下図は実際のCBDの分析結果で、CBDのみシグナルが検出されており、CBDが良好な品質であることを示したエビデンスです。

もちろん、弊社は海外の信頼できるメーカーからCBDを仕入れており、分析検査証明書(CoA)も確認していますが、自社の分析機器でも原料に問題ないか裏付け検査しています。

 また、自社で分析できるようにしていると、長期保管後や製品化後にCBDの純度や品質に問題がないかどうかも確認できるため、分析機器を導入していない他社よりも信頼して弊社のCBD製品を手にとってもらえるかと思います。

その他、危険な添加物や不純物が含まれていないか

カンナビノイド製品の品質検査には、カンナビノイド以外の不純物や添加物が含まれていないかの確認も重要です。

以下の図はニコチン入り電子タバコ(上)と弊社のCBDべイプ製品RICHILL(下)をそれぞれ分析した結果で、RICHILLにはニコチンが含まれていないことを示したデータになります。

また、C&H株式会社では、定量的なエビデンスやデータを駆使することで、カンナビノイド製品の品質や安全性を検査できるだけでなく、カンナビノイドの加工技術の開発やプロダクトへの適用を研究することができる、カンナビノイドの研究に特化した環境をそろえています。

THCH問題から見る日本の課題

日本が危険な薬物の流通を加速させ、状況を複雑にした?

THCHやHHCの問題にもあったように、規制を繰り返しても法規制の穴をかいくぐって別の新たな物質が流通していく状況は、物質の管理や健康被害の把握を難しくし、結果的に、より危険な薬物が蔓延し、問題をより複雑にしてしまいます。

すなわち、新たな物質が出たら規制するというのを繰り返す行為は、根本的な問題解決にはつながりません。それどころか状況を悪化させる危険な行為かもしれません。

大麻の科学的な研究と規制緩和について正しく議論することが、本質的かつ根本的な問題解決につながるのではないかと思っています。

そもそも、THCHなどのような、もともとは大麻に含まれる(自然界にある)、THCに非常によく似た構造の物質が注目されるようになってきたのには以下のような原因があると考えられます。

1.THCを含む大麻には有用性があるということが研究で示されてきたこと
2.科学的根拠の薄い日本の大麻(THC)に関する言及や厳格すぎる法規制

THCを含む大麻には有用性があるということが研究で示されてきた

多くの研究により、THCを含む大麻は癌患者の食欲不振や痛み、吐き気などの緩和に有効で、適切な品質管理と使用量のコントロールのもとであればリスクも低いということが示されています。

実際に、THCを含む大麻には鎮痛作用や抗がん作用、食欲増進効果などが研究で示されています。

もともとTHCHやHHCなども自然界に存在する大麻という植物の成分であり、研究が進んでいるTHCと極めて類似の機能や構造を持ちます。そのため、これらのカンナビノイドには一定の信頼性を使用者が認めてしまっている状況になっていると考えられます。

しかし、THCHやHHCなどは大麻に微量しか含まれていないため、大麻から抽出するのは困難となっており、実際には、化学的処理により合成されています。

科学的根拠の薄い日本の大麻に関する言及や厳格すぎる法規制

一部の国では大麻やTHCの利用が緩和され、有効活用されている国もありますが、THCには多幸感もたらす作用があり、一定の精神的な依存性も認められているため、日本では使用が禁止されており、非常に厳しく取り締まられています。

ただし、過剰とも言える取締りの厳しさや課される罪の重さ、それによる社会的な影響、研究や医療への利用の理不尽な規制など、多くの面で日本の大麻への姿勢が批判されているのも事実です。

日本の大麻およびTHCに対する見解や化学的根拠のうすいアンバランスな法規制が全面的に見直され、規制が緩和されない限り、THCHや危険ドラッグにまつわる問題は解決されないでしょう。

最後はかなり深いところまで切り込んでいきましたが、ここまで見ていただきありがとうございました!

今後もカンナビノイドやヘンプの可能性を広げていくために研究開発に力を入れていきたいと思っておりますので、皆様の応援や御支持をお待ちしております。

御取材、御相談等があれば、お気軽にお申し付けください。

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