大麻取締法、何が変わる?医療用大麻との関連は?改正の内容や背景、時期をくわしく
先日、10月20日に召集される秋の臨時国会にて、大麻取締法の改正案が提出される予定との報道がありました。
今回の改正で、大麻に関する規制がどのように変わるのでしょうか?
この記事では、大麻取締法とはどういう法律なのか、今回の改正の内容や背景を詳しく解説します。
大麻取締法とは
大麻取締法とは、不適切な大麻の利用・濫用を防ぐことを目的に、日本国内における大麻の取り扱いを規制している法律です。
1948年(昭和23年)に制定され、以後4回の改正を経ています。現行法の内容を詳しく見ていきましょう。
"大麻"の定義
まず、大麻取締法における"大麻"の定義を確認します。
第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
現行法では、「大麻」=「成熟した茎と種以外の部位を含む大麻草またはその製品」と定義されています。
大麻草の全部位を規制しているわけではなく、成熟した茎と種、およびその茎や種を使用した製品は規制の対象外です。
成熟した茎と種は"大麻"ではない
現行の法律では、大麻の成分に対しての規制(成分規制)ではなく、大麻草の特定の部位を対象とした規制(部位規制)が行われています。
成熟した茎や種子は、使用者を"ハイ"にする成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」をほとんど含んでいないとされているため、その有害性が低いと認識されています。この理由で、これらの部位は規制の対象外となっています。
また、茎の部分は麻織物や麻縄に利用され、種子は七味唐辛子に使用されるなど、国内において日常的・伝統的に使用されています。
"大麻の使用"は禁止されていない
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
現行法では、大麻の所持や栽培、譲渡は禁止されていますが、その使用に関しては明示されていません。
大麻が使用されたかどうかを判別する際、尿検査によって尿中にTHC(厳密には、THC代謝物)が検出されるかどうかが重要な判断材料になります。
しかし、大麻取締法で規制されていない、大麻草の成熟した茎や種にも微量のTHCが含まれることがあり、尿検査により検出されたTHCが、大麻草のどの部位に由来するものなのかを判別するのは至難の業です。
そのため、「尿中からTHCが検出された=大麻の規制部位(花穂や葉など)を使用した」とは断定できません。
そこで、覚醒剤などと異なり、大麻の使用自体は今のところ処罰の対象外となっています。
(人工的に化学合成されたTHCについては、麻薬及び向精神薬取締法にて規制されています。)
大麻由来の医薬品は禁止されている
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
現行法では、大麻由来の医薬品の処方や使用も禁止されています。
そのため、医師が大麻研究者免許を取得するなどの場合を除き、医療分野において大麻由来の医薬品を使用することは現状できません。
どう変わる?:改正の内容
今回の改正により、具体的にどのように変わるのでしょうか?
部位規制から成分規制へ
現行法では、大麻の成分に対しての規制(成分規制)ではなく、大麻草の特定の部位を対象とした規制(部位規制)が行われています。
つまり、大麻由来の各成分(CBDやTHCなど)に基づいた規制ではありません。
部位規制のデメリットの一つは、どんなに安全性が確認されたものだとしても、規制部位から抽出された場合は違法になってしまう点です。
実際、私たちのようなCBD製品を取り扱う業者は、そのCBDが成熟した茎もしくは種子から取れたことを証明する必要があります。(茎種証明書)
また、今後解禁される予定の医療用大麻は、規制部位から抽出されたCBDなどを含むため、成分規制にしない限りは解禁ができません。
そこで、今回の改正では、今まで75年間続いた部位規制から成分規制へと変更される予定となっています。
医療用大麻の解禁
現行法では、大麻由来の医薬品の処方や使用は禁止されています。
しかし、国際的な大麻規制の見直しもあり、従来の医療では治療が難しい難治性のてんかんなどに対して、医療大麻が有効であるとの報告も
そこで、厳重な承認と管理のもとで、医療用大麻に関しては合法的に使用ができるように法改正が行われる見込みです。
純CBD製剤「エピディオレックス」は大麻由来の医薬品ですが、厚生労働省の認可のもと、現在、日本国内にて治験が行われています。
出典:The Guardian「Cannabis-based drug for epilepsy to be fast-tracked into NHS」
大麻使用罪の創設
現行法では、大麻の使用は禁止されておらず、 大麻の使用に関する証拠が十分揃った場合でも、その所持に関する証拠が不十分な場合は検挙することが難しい状態です。
また、昨今の若年層における大麻関連の事犯件数の増加もあり、「使用」についての罰則を定める方向性でまとまっています。
具体的には、現在の部位規制に代わり(もしくは加えて)、THCなどの酩酊作用を持つカンナビノイドに着目した、成分規制が行われるでしょう。
そのため、尿検査でTHC(厳密にはTHC代謝物)が検出されて基準値を超えた場合には、大麻使用罪が適用されるようになると考えられます。
伝統的な大麻栽培の拡大
現行法では、都道府県知事より免許を発行された場合に限り、繊維もしくは種子を採取する目的での栽培が認められています。
しかし、免許の審査基準はそれぞれの都道府県に委ねられており、新規で大麻栽培の免許を取得することは実質的に難しい状況です。
実際、大麻農家は年々に減り続け、令和2年時点での全国の大麻栽培者数は30人となっています。
それに伴って大麻由来の繊維や種子の収穫量も減少し、国内需要の多くを中国などの海外からの輸入に頼っている状況となっています。
このような現状を踏まえて、一元化された免許の審査・発行基準や栽培の管理ルール作りが行われる予定です。
改正の流れ〜これまでとこれから〜
これまでの動き
2021年1月、厚生労働省が主催となり、有識者を集めた「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が発足。
以後、2021年6月までに8回に渡って議論を重ね、以下のような見直しの方向性が定められました。
①成分に着目した規制
②大麻から製造製造された医薬品の施用に関する見直し
③大麻の使用に関する罰則
④繊維等として使用される大麻草について
この検討会での議論をもとに、2022年5月に厚生労働省内で「大麻規制検討小委員会」が発足し、現行の大麻取締法の改正案の方向性をまとめる議論が行われました。
そして、2022年10月にとりまとめの報告書が公表され、改正案の方向性が定められました。
これからの動き
2023年10月20日に秋の臨時国会が召集され、この国会にて大麻取締法の改正案が提出される予定です。
臨時国会の会期日数は直近だと3ヶ月以内のケースが多く、改正法案が可決された場合、2024年2~3月頃に公布されるのではないかと考えています。
今後の動きに関しては、最新の情報が入り次第、アップデートしてお知らせいたします。
まとめ
以上、大麻取締法の改正をテーマに、現行法の内容や改正内容などを見ていきました。
今回の大麻取締法の改正は、CBDや医療用大麻に対する社会の認識変化の大きなきっかけとなるものと我々C&Hは捉えています。
これにより、大麻が過去には悪とされてきたものから、人々の悩みや課題解決の手段としての可能性を秘めたものへと認識が変わることを期待しています。
法が改正され、従来の部位規制から成分規制へと変わることで、大麻成分に関するルールが明確化されます。
もちろん、これにより新たな問題が生じる可能性もありますが、医療用大麻の治験や研究がより活発に推進されることが期待されます。特に、従来の治療が困難であった難治性てんかんなどを抱える患者が、大麻による治療を受けることが可能になります。
これらの変化に伴い、法的リスクを懸念していた業者や業界の新規参入も増加することが予想され、大麻市場全体の活性化が進むでしょう。
しかし、海外での事例を見ると、医療用大麻は特定の疾患について従来の治療法が有効でないことが確認された場合のみ処方されるなど、厳しい条件付きでの処方となっているとの批判もあります。
したがって、医療用大麻の解禁後も、CBDや大麻の有効活用のためには、安全性だけでなく、使いやすさやアクセスの容易さといった利便性の向上が必要とされます。
私たちC&Hは、自社研究所での研究開発の実績と、弊社製品をお客様にお使いいただく中で得た経験や知識を基に、安心・安全なCBD市場の実現を推進してまいります。
そのなかで、医療従事者の方と協力して製品を開発したり、大麻の正しい知識と理解を発信したりすることで、より多くの人々が安心して大麻製品にアクセスできるような未来の実現をめざしていく所存です。