【検証】最新の分析機器を使ったCBDの分析 vol.02

【検証】最新の分析機器を使ったCBDの分析 vol.02

カンナビノイドの分析について

記事「【検証】最新の分析機器でCBDの分析やってみた vol.01」では、CBDなどのカンナビノイドの分析でよく使われるGC-MSとHPLCについてご紹介しました。

この記事では、実際のこれらの分析機器を使って、市販されているCBD製品のCBD含有量を計測してみました。

GC-MSを用いたCBDの同定

CBDべイプのリキッドRICHILL+は弊社の製品ラインナップのひとつですが、この製品のリキッドをGC-MS分析にかけることで主要成分をCBDと特定(=MS同定)しています。

 RICHILL+の分析によって実際に検出されたシグナル(=信号)がCBDであることを示すMSスペクトル(=化合物の指紋)が得られました(下図:実際の分析データ)。

日本国内における市場品のCBD分析

日本の市場に流通している9種類のCBD 電子リキッドをネットから購入し、ラベル通りにCBDが含有されているかGC-MSで定量分析しました。参照のために、C&HのRICHILL+のラボ試作品も同様に分析したので、全10種類のサンプルを分析に使用しました。

各商品のサンプルのプロファイルを下表に示します。

商品 RICHILL+ Ct T M N
製造国 日本 日本 日本 日本 日本
濃度 30% CBD
(ラボ試作品)
10w% CBD
ブロードスペクトラム
10% CBD 10% CBD
CBNとCBG含有

6% CBD
ブロードスペクトラム

 

商品 W Cp Cf A P
製造国 日本 米国 米国 イギリス EU
濃度 10% CBD 10% CBD 3.3% CBD 10% CBD
フルスペクトラム
5% CBD
フルスペクトラム

 

分析結果は上図に示す通りで、ラベル表記にあった数値を100と換算した時に、実際に含有されているCBDがその数値からどれだけズレていたかを調査しています。

図より、5/10すなわち半数の製品がラベル表示通りでしたが、3つの製品(およそ1/3の製品)で大きくラベル表示から異なる結果が得られました。

なお、RICHILL+(R+)では変動-1%(-0.7%)と非常に良い結果が得られていますが、R+はラボ試作品であるため特にラベル精度が高くなっています。

合成CBDか植物由来CBDかを見分けることに成功

さらに、合成CBDもしくは自然由来CBDをMCTオイルに溶かしたオイル2種類のサンプルをGC-MS分析したところ、下図のデータ(クロマトグラム)が得られました。下図はカンナビノイド検出領域の拡大図になります。

※図中の緑で示した「MCT由来の微量分解物」は希釈剤(キャリアオイル)由来なので無視してもよい。

 注目すべきは植物由来CBDで微量に検出された(A)、(B)になります。これらはCBDが天然由来CBDであることを示す強力な証拠になりえます。

 (A)、(B)のMSスペクトル(=化合物の指紋)は下図のようになり、(A)はNISTライブラリ(=化合物のデータファイル)からCBDVと特定できました。

また、(B)は文献*より、CBDBであることが判明しました。

※いずれの文献もヘンプ由来(植物由来)のCBDではCBDVとCBDBが微量検出されると示しています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0731708519310131

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352340919308182

https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/can.2020.0021

また、上図のように、(A)CBDV、(B)CBDB、(C)CBDはそれぞれ非常によく似た構造のため、沸点や極性、溶解性などの物理的な性質が類似しているので、通例の方法において、植物由来ではCBDからCBDVやCBDBを完全に分離するのはほぼ不可能になります。

なお、化学的にCBD→CBDVや CBD→CBDBのような分子変換は生じることがないため、合成で作られるCBDアイソレートからCBDVとCBDBが検出されることはありえません。

過去の研究例(文献3)からも、CBDVやCBDBは天然由来のCBDアイソレートからのみ微量検出され、合成CBDでは検出されることがないというデータがあがっています(下図)。この文献ではHPLCが分析に利用されています。

まとめ

 エッセンシャルオイル、健康補助食品、パーソナルケア製品、および医療用製剤を含むCBDに関連する市場が、過去数年にわたって多くの注目を世界で集めてきました。

このような理由から、CBD製品の組成を評価するために標準化された分析プロトコルが必要であるとされ、世界中で研究がされています。

しかし、日本はCBDのようなカンナビノイドの分析技術の確立や関連の研究において海外に大きく遅れを取っており、技術の確立が製品の流通に追い付いていないという状況が生じています。

私たちは、CBDやその関連する製品の分析が可能な技術を開発することで、日本の安心・安全なCBD市場の実現を推し進めていきたいと考えています。

これらを実現するため、分析技術の開発および分析研究の拡張に取り組んでいきます。

RuffRuff App RuffRuff App by Tsun