【検証】最新の分析機器を使ったCBDの分析 vol.01

【検証】最新の分析機器を使ったCBDの分析 vol.01

近年、日本でもCBD製品の認知が高まってきていますが、そのCBD製品の安全性やラベルの正確性にはまだまだ疑問点があります。

その理由のひとつには、ほとんどすべての製品について、その成分組成を日本国内では分析されていないということがあります。

今回は、RICHILLのカンナビノイド分析技術を紹介しながら、CBD製品の分析について解説していきます。

カンナビノイドの分析とは

CBD製品などのカンナビノイド製品には、分析検査証明書(CoA)というものがあります。

よく観察すると、その分析にはHPLCやGC-MSと呼ばれる分析機器が使用されているということが分かります。

弊社では、GC-MSとHPLCを実際に保有しており、弊社製品の安全性の確認などに役立てています。

GC-MSとは

GC-MSはテルペンなどの気体になりやすい軽い化合物の測定に適しており、主に石油産業で普及しました。石油類の多くは軽い有機化合物で、常温で気体もしくは液体です。

GC-MSは、その他にも香料などの成分の分析にもよく使用されています。

C&HではGC-MSで様々なカンナビノイドを同定、定量できる分析条件を開発しました。

下図は主要なカンナビノイド(CBD, CBN, CBG, CBDV)の標準溶液を分析した結果です。

図のように、分析で分離された各成分がそれぞれシグナル(=山のような信号)として検出されます。

上の図を観るとわかるように、弊社が開発した分析条件では、Δ8THCやΔ9THCなどのTHC類なども含め、主要なカンナビノイドを多数検出可能な条件を整えています。

GC-MSは未知成分の特定やテルペンなどの低沸点成分の分析に有用なため、製品に含まれるカンナビノイドやテルペンの種類が不明でも、その成分を明らかにすることに優れています。

しかし、GCは分析時に熱を加えるため、熱に弱い物質の分析には適していません。

さらに、GCはTHC未検出の証明にも利用できません。この理由については、後ほど説明します。

そこで、上記のこれら問題点を解決できる分析機器がHPLCになります。

HPLCとは

HPLC-UVは医薬成分などの気体になりにくい重い化合物の測定が可能で、主に製薬産業でHPLCが普及したと言われています。

薬の多くは液体か固体で、製薬の過程で扱う中間体(薬の合成の途中段階の化合物)もその多くが液体か固体です。

実は、カンナビノイドのような、あまり軽くもなく重くもない化合物は、GCとHPLCのどちらの分析方法も利用することができます。

C&Hでは、HPLC-UVでも様々なカンナビノイドを検出、定量できる分析条件を開発しました。下図は主要なカンナビノイド(CBD, CBN, CBG, CBC, CBDV)の標準溶液を分析した結果です。

GC-MSの時と同様に、弊社が開発した分析条件では、Δ8THCやΔ9THCなどのTHC類なども含め、主要なカンナビノイドを多数検出可能な条件を整えています。

HPLCは、熱に不安定な成分や沸点の高い化合物も分析可能で、GCよりも適用範囲が広い分析法になります。加熱しないので、新鮮かつ無加工に近い状態でサンプルを分析できるのが特徴です。

さらに、カンナビノイドについては、GC-MSと比べて明白に高い精度での定量が可能です。定量の精度に関しては次の精度検証で解説します。

GC-MSとHPLCの違い

まず、GC-MSとHPLC-UVそれぞれの特徴を比較した上で、実際に本法のカンナビノイド分析の精度検証結果を紹介いたします。

カンナビノイド分析におけるGC-MSとHPLC

カンナビノイド分析におけるGC-MSとHPLC-UVの主な利点と欠点をそれぞれ以下にまとめました。

※対象サンプルはカンナビノイド含有製品を想定しており、本法を基準としています。 

 分析機器 GC-MS HPLC
メリット 【一般】
・成分の分離能が高い
・不純物の悪影響を減らしやすい
・MSによる同定が可能
【一般】
・熱に弱い成分も分析可能
・沸点の高い成分も分析可能
・水溶液も分析可能

【カンナビノイド】
・THC未検出を確認可能
・定量精度が高い
・検出器によるシグナルの再現性が高い
デメリット 【一般】
・熱に弱い成分は分析不可
・沸点の高い成分は分析不適
・水分を含むサンプルが分析できない

【カンナビノイド】
・THC未検出の証明には不適
・定量精度が劣る
・カラム等の分析経路の汚染や劣化が生じやすい
【一般】
・GC-MSほど多成分の分析には向かない
・不純物の悪影響が起こりやすい
・検出限界の再現性がGC-MSよりも低い

 

上記のように、それぞれの分析機器にはメリットとデメリットがあるので、状況に応じて使い分けるのが、カンナビノイド分析において重要となります。


また、GC-MSはテルペンなどの揮発性成分の分析に適しているので、製品の成分プロファイルを十分に理解するためには、これら二つの分析を駆使することが重要です。

カンナビノイド分析におけるGC-MSの精度検証

先述の、弊社で開発したGC-MSによるカンナビノイド分析条件において、標準サンプルを用いて検出限界および定量下限を算出しました(下表)。

また、表中のCV(%)は濃度算出時における数値のブレの%度合を示す指標となる値です。

 各成分 検出限界(ppm) 定量下限(ppm) Intra-day CV(%) Inter-day CV(%)

CBD

<0.05 <0.1 5.3 7.4
CBDV <0.05 <0.05 3.7 5.1
CBG 0.25 0.5 4.0 7.6
CBN <0.05 <0.05 7.7

10.4

 

結果より、CBG以外のカンナビノイドの検出感度は良好でしたが、CBGの検出感度は低くなりました。また、定量(濃度決定)の精度も許容できる範囲ではありましたが、高精度とは言い難い結果でした。

カンナビノイドは下でも説明してあるように沸点が400℃を超えているので、GCではテルペンなどと違って定量精度の低下やカラムなどの分析経路の汚染が生じやすくなっています。なお、テルペンは沸点が150-300℃程度です。

カンナビノイド分析におけるHPLC-UVの精度検証

先述の、C&Hで開発したHPLCによるカンナビノイド分析条件においても、標準サンプルの分析にて、検出限界および定量下限を算出しました(下表)。

各成分 検出限界(ppm) 定量下限(ppm) Intra-day CV(%) Inter-day CV(%)

CBD

<0.02 <0.05 0.4 0.9
CBDV 0.01 <0.05 0.3 0.6
CBG <0.02 0.05 0.3 0.8
CBN <0.01 <0.05 0.2

0.8

 

検出限界および定量下限はGC-MSと比較して全体的に改善が観られました。

定量分析では、GCMSでの結果と比較して、圧倒的に良好な精度で各種カンナビノイドを定量できることを確認しています。

GC-MSではCVがCBN以外で3-8%、CBNで7-11%の範囲でしたが、HPLC-DADでは全ての条件でCVが<1%となりました。

これは測定したサンプルの約7割が1%未満のブレで定量できることを保証しています。

まとめ

今回は、カンナビノイド分析でよく使われる最新の分析機器「GC-MS」と「HPLC」について紹介しました。

次回の記事では、市場に流通している製品を実際に分析し、CBDがどのくらい含まれているのかを見ていきたいと思います。

RuffRuff App RuffRuff App by Tsun